ヒューリスティクスとは、複雑な計算を省いて近似的に答えを出すこと
更新日:2017/09/09
ヒューリスティクス(heuristics)とは、厳密な議論や面倒な計算をせずに、近似的に妥当な答えを出そうとすることだ。
ヒューリスティクスは計算機科学(コンピュータ科学)で使われる用語だ。
計算機で何か計算を行う際に、厳密に計算しようとすると、膨大な時間ともの凄いマシンパワーが必要な計算になる場合がある。
たとえば気象予測をコンピュータで計算するのは、かつては不可能だった。
台風の進路を計算するのでさえ、スーパーコンピュータが必要だった。
さらに台風による被害を計算で予想しようと思ったら、もの凄い計算になるに違いない。
こういう風に、世界に数台しかないスーパーコンピュータでも、何百年もかかるような計算は山ほどある。
こういうとんでもない計算は、実際問題やろうと思ってもできないし、コストパフォーマンスも非常に悪い。
そこで、こういうとんでもなく複雑で時間がかかる計算は避けたい。
そして、もっと簡単な方法で、大まかな結論を近似的な方法で得よう。
こういう考えが「ヒューリスティクス」ということらしい。
近似的な方法で、なんとか妥当な答えをだそうというのが、計算機科学におけるヒューリスティクスと言うことらしい。
そして似たようなことを、人間もやっているらしい。
厳密な検証も行わず、面倒な思考も避けて、簡単に雑に答えを出そうとする。
これ自体は計算機科学と同じなのだが、ヒューリスティックな答えが、かなり間違ってるって事だ。
人間のヒューリスティクスは、たいてい間違っている
ヒューリスティクスはコンピュータ科学の用語だが、心理学や行動経済学でも、よく使われる。
ヒューリスティクスは、複雑で時間がかかるような計算を、もっと簡単に、近似的に行おうと言うことだが、人間の行うヒューリスティクスは、かなり怪しい。
人間のヒューリスティクスは、別の言葉で表すと「経験則」という言葉が一番近いが、教育関係の用語の「素朴理論」の方が近いかも知れない。
経験則というのは、様々な経験から見つけ出した法則のことで、素朴理論というのは、子供が思い込むような検証が行われていない法則だ。
小学校低学年までの子供に、形の異なるコップに、同じ分量のジュースを入れて選ばせると、背の高いコップに入ったジュースを選ぶ子供が多数になる、というようなのが素朴理論だ。
ヒューリスティクスで間違えやすい例として有名なのが、次の「リンダ問題」という設問だ。
リンダ問題
リンダという女性がいます。
リンダは、次のような女性です。
- 歳は31歳で、独身です。
- 非常に聡明な女性で、はっきりものをいうタイプです。
- 大学で哲学を学び、学生時代は人種差別や社会正義の問題に関心を持っていました。
- 過去には、反核デモにも参加していました。
ではリンダは今、何をしていると思いますか?
次の二つの選択肢から可能性が高い方を選んでください。
A:銀行員をやっています。
B:銀行員で、女性解放運動にも参加しています。
この質問は、非常に馬鹿馬鹿しい設問で、可能性が高いのは(A)の方だ。
というのも可能性は、
- 銀行員をやっている
- 銀行員をやっていない
にまず分かれる。
そして銀行員をやってたとしても、
- 女性解放運動に参加している
- 女性解放運動に参加していない
と言う風にりに分かれるからね。
小学校の算数や中学校の数学で習うベン図で考えれば当たり前だ。
ところが不思議なことに、誤答の(B)を答える人の方が多いのだという。
こういうのがヒューリスティクスってことだね。