パレトー最適(パレトー効率性)とは
更新日:2017/09/17
市場の失敗(market failure)とは、市場メカニズムによって決まった価格や分配結果が、パレトー効率性が達成されていない経済現象のことだ。
パレトー効率性とは、パレトー最適とも呼ばれるが、パリ生まれのイタリア人学者であるヴィルフレド・パレトー(パレート/Vilfredo Pareto)によって提唱された、もっとも良好な資源分配のことを言う。
日本でパレトーというと、「パレートの法則」(上位2割のお金持ちが、社会の8割の富を持っている/二八の法則)が有名だが、ミクロ経済学での業績は、パレトー効率性が大きい。
パレトー効率性が達成されているというのは、誰かが自分の効用(満足度)を増やそうとして、別の誰かと取引したとき、相手の効用を減らさざるを得ないような状況のことを言う。
簡単に言うと、学校の給食で、お替わりや余分も全部分配し終わって、誰かがもうちょっと食べたいと思ったら、他人の給食を奪わないといけないような状態だ。
お替わりや余分があれば、もうちょっと欲しい人は、それを食べれば良くて、他の誰も自分の分を減らさないで済むので、社会的にはこっちの方が良い。
しかし、余りが出るというのも無駄遣いしているってことだから、パレトー効率性では、効率的な分配ではないとされる。
そういうわけだから、パレトー効率性やパレトー最適になっているからと言って、実社会的に問題が無いとは限らないわけだ。
そして市場メカニズムによってパレトー効率性・パレトー最適が達成されない原因としては,次のような問題が挙げられている。
市場の失敗の原因の例
- 不完全競争市場(独占や寡占が存在する)
- 経済の外部性の存在(買わない人にも利害が及ぶ)
- 情報の非対称(売り手と買い手の持っている情報が同じでは無い)
- 公共財などのフリーライダー問題
市場の失敗から、不完全競争の研究へ
20世紀の経済学では、「新古典派グループ」と、「ケインズ派グループ」が激しい議論を繰り広げていた。
新古典派グループ(ニュー・クラシック)は、最適分配が市場機能(市場メカニズム)によって達成できるものだと主張していた。
一方、ケインズ派グループ(ケインジアン)は、市場機能だけでは最適分配は不可能だとして、政府などによる再分配が重要だと主張していた。
特に新古典派は「市場万能主義」を唱えて、なんとか市場メカニズムを働かせようと悪戦苦闘していた。
ところが独占や寡占状態に近い業界も多く、そういった寡占的な業界を完全競争市場に近づけることは非常に難しい。
特に設備投資に膨大な資金と時間が必要な業種において、市場が寡占的になるのは、どうしても避けられない。
小さな電力会社は、いくら画期的な発電所を造ったとしても、送電線網がなければ大電力会社の競争相手にはなり得ない。
小さな航空機メーカーも、いくら高機能の飛行機を作ったとしても、既に実績と歴史を積み重ねた大航空機メーカーの競争相手にはなり得ない。
つまり、不完全競争を完全競争に近づける努力には限界があって、結局は政府などによる何らかの介入が必要になってしまうわけだ。
そこで経済学者達は、不完全競争市場の研究を進める方向に転換した。
そこで不完全競争市場分析に応用されたのが、ゲーム理論だ。
20世紀の中頃に誕生したゲーム理論は、誕生から20年ほどの時を経て、ミクロ経済学の大きな柱に採用されたわけだ。