マンガ雑誌は色々あるのに、専門誌はなぜ似たり寄ったりになるのか?
更新日:2017/09/18
月刊の専門誌は、ほぼ同じような値段で、同じようなページ数で売られていることが多い。
内容も似ていることが多く、どれを買うかは、殆ど自分の趣味みたいなところがある。
でも、これは一体どういうことなのか?
マンガだったら、分厚い月刊誌もいくつも出ているし、逆に薄っぺらい雑誌もある。
グラビアやカラーページが多い雑誌もあるし、逆にカラーページが殆ど無い雑誌もある。
付録が付いている雑誌もあるし、何にも付いてなくても売れている雑誌もある。
ところがマイナーな趣味の専門誌の場合、どの雑誌を見ても、似たり寄ったりだ。
似たような装丁で、似たような分厚さで、似たような価格で売られている。
ではなぜ、マイナーな趣味の専門誌はなぜ、似たような値段と内容になるのか。
それはマイナーな趣味の専門誌業界が、ゼロサムゲームになっているからだ。
マイナーな趣味の業界は奪い合うパイが小さいため、どこかの雑誌が売り上げを伸ばすと、別の雑誌の売上げが減ってしまう。
というのも、専門誌が2誌あっても、内容自体は殆ど同じになってしまうからね。
そこで、売り上げを伸ばそうと考えて、価格を下げることを考える。
価格は強い購買シグナルなので、価格を下げれば、確実にシェアを増やすことができるからだ。
値下げ戦略の利得表の例
シェア | B誌が価格を維持する | B誌が価格を下げる |
---|---|---|
A誌(自社)が価格を維持する | (A:0.5, B:0.5) | (0.3, 0.7) |
A誌が価格を下げる | (0.7, 0.3) | (0.5, 0.5) |
ところがこの利得表を見て分かるとおり、価格を下げるという選択肢は、非常にリスクが高い。
というのも自社が価格を下げても、競合他社が価格を下げてくれば、シェアは変わらないからだ。
シェアが変わらないのに、粗利が下がってしまうので、値下げには慎重にならざるを得ない。
付録を付けるか、本体価格を下げるか
ゼロサムゲームとは、限られたパイを奪い合うゲームでもある。
パイの大きさの上限が限られているため、どうやってより多くのシェアを獲るかが鍵になる。
ところが既にシェアを持っているグループから見ると、いかにシェアを落とさないで、利益を上げるかという風に考えざるを得ない。
こういう風に失点を最小化しつつ、利得を狙うのが「ミニマックス戦略」になる。
シェアが小さなプレイヤーは、当然ながらシェアアップを狙って挑戦してくるわけだから、とにかく失敗を避けてシェアを守ることが重要になるのだ。
ただし、シェアを増やすために販売価格を下げるのは、非常にリスキーな戦略になる。
シェアを伸ばしても、利益率を下げているため、さほど大きなプラスにならないからだ。
価格を下げてシェアを伸ばしても、その結果、収支が悪化して、ちょっとしたことで倒産ということもよく聞く話だし。
そのため、マイナーな専門誌は、他社の専門誌と同じ価格を設定せざるを得ない。
また他社の専門誌が価格を下げれば、同じ価格に下げてシェアを守るしかない。
そこで売り上げを伸ばすために、価格を下げる以外の方法を考えざるを得ない。
たとえば「カラーページを増やす」とか「付録を付ける」という戦略だ。
同じ価格でカラーページを増やしたり、付録を付けたりすれば、多少はコストアップにはなるが、売上げを伸ばせるかも知れない。
利得表を作ってみると、こういう感じになる。
専門雑誌の利得表の例(付録を付けるか、値段を下げるか)
シェア | B社:付録をつける | B社:何もしない | B社:価格を下げる |
---|---|---|---|
自社:付録を付ける | (A:0.5,B:0.5) | (A:0.6,B:0.4) | (A:0.4,B:0.6) |
自社:何もしない | (A:0.4,B:0.6) | (A:0.5,B:0.5) | (A:0.3,B:0.7) |
自社:販売価格を下げる | (A:0.6,B:0.4) | (A:0.7,B:0.3) | (A:0.5,B:0.5) |
シェアを減らさない観点で考えると、他社が価格を下げる戦略にでれば、自社も価格を下げる戦略を採らざるを得ない。
また他社がカラーページを増やしたり、付録を付ける戦略にでれば、自社も同じ戦略を採らざるを得ないことが分かる。
こういうわけで、マイナーな趣味の専門誌は、同じ価格で似たような内容になりがちってことだね。