期待効用理論とは
更新日:2017/09/10
かつて経済学では、「期待効用理論」という理屈で、人が経済活動を行うと考えられていた。
期待効用理論というのは簡単に言うと、高校の数学で学んだ「期待値」のようなものだ。
期待値の計算は、【賞金】×【確率】で計算される。
たとえば、賞金が1万円で、当たる確率が0.01(1%)のクジであれば、1万円×0.01=100円が、このクジが期待値となる。
この期待値が100円のクジの値段が100円以下なら、買ってもよいと考えるわけだ。
そして選択肢が色々あっても、期待値が同じであれば、一定にばらつくと言う風に仮定されていた。
たとえば、等しい期待値のクジがあって
- (A)20%の確率で20万円がもらえる(期待値4万円)
- (B)40%の確率で10万円がもらえる(期待値4万円)
という選択肢があった場合、どちらのクジを選ぶかは好き好きだ。
恐らく確率が高い方に惹かれる人と、もらえる金額が高い方に惹かれる人に別れるのだと考えられる。
また期待値が異なれば、期待値が高い方が選ばれるとされていた。
ただお金持ちにとっては、10万円も20万円も大した違いはないため、賞金が「効用(こうよう)」という概念に置き換わった。
効用というのは、コストを払って得られる満足度の事で、これなら貧乏人でも金持ちでも、使える概念だ。
そして
期待効用=得られる効用×実現確率
と言う計算ではじき出せる数値によって、人は行動を決めるというのが、期待効用理論だ。
ホモ・エコノミクス(経済人)
人間は果たして本当に、期待効用理論に従って行動するのか。
というのも期待効用理論は、人間が「ホモ・エコノミクス(経済人)」であるという前提に立っているからだ。
ホモ・エコノミクスとは、経済に関して、冷徹に自分自身の損得を勘定する、経済合理的に行動するというタイプの人間の事だ。
だから選択肢が色々あっても、効用と実現可能性を勘案して、一番、期待効用が高い選択肢を選ぶはずだ、という風に考えていたわけだ。
だから期待値が同じであれば、どちらが選ばれても同じということになる。
実際、
- (A)20%の確率で20万円がもらえる(期待値4万円)
- (B)40%の確率で10万円がもらえる(期待値4万円)
という前述の選択肢では、どちらかが特に多く選択されるわけではないから、期待効用理論には沿っている。
ところが反例が報告された。
というのも、
- (C)50%の確率で4万円がもらえる(期待値2万円)
- (D)100%の確率で1万円がもらえる(期待値1万円)
という選択肢を用意した場合、6割以上の人が選択肢(D)を選ぶという結果が報告されたのだ。
期待値計算では、選択肢(C)の方が2倍も高いので、期待効用理論によれば、こちらが選ばれるはずなのだが、様々な実験では(D)の方が多く選ばれることが確かめられている。
これは明らかに期待効用理論に沿っていない結果だが、これは一体どういうことだ?と言う話になり、行動経済学の分野に注目が集まった。